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今月の労働相談4月分
この記事は、大阪労働総合事務所からの転載のコーナーです。
転載先http://www.pref.osaka.jp/sogorodo/

 今月の労働相談Q&A 業績悪化に伴う賃金引き下げ、配置転換、出向、転籍、退職勧奨、希望退職、解雇、雇止めについて 


 300人の従業員がいる企業の大阪事業所(本社は東京)で働いています。昨今の不況が影響してか、最近業績が悪くなってきました。労働組合がないのですが、今後、賃金が減らされたり、人員整理で辞めさせられたりといったことが起きないか心配です。そのようなことを会社から言われたときにどのような主張ができるのか、事前に関係する法規定や法的な考え方などを知っておきたいと思います。基本的な内容を教えてください。


 労働相談では、業績悪化を理由に突然に賃金を減らされた、事業所の廃止に伴い出向を命じられた、会社から辞めてくれと言われたなどの相談が少なくありません。業績の悪化は会社にとって重大な問題ですが、だからといって、使用者が自由に労働者の労働条件を不利益に変更したり、解雇したりできるものではありません。昨今の厳しい経済情勢のもとで経営状況が悪化し、やむを得ず従業員の賃金を減額したり、希望退職者を募集したりする企業が見られます。それらが客観的にやむを得ない状況にあったとしても、実施においては、関係する法規定や当該労使間での定めを遵守し、事前に充分話し合うことが必要です。労使の方々に、あらかじめ認識しておいていただきたい法規定や法的な考え方をご紹介します。
1 賃金の引き下げについて

 賃金は、労働契約の内容である労働条件の中で最も重要なものです。労働契約法では、労働条件について「労働者と使用者の合意により変更することができる【労働契約法第8条】」とされており、労働者と使用者との合意がなければ不利益に変更することができないことを定めています。
 一般に、多くの企業では、就業規則や労働組合との労働協約の中で賃金に関する定めをしており、それらを変更することで賃金の変更が行われています。
 就業規則や労働協約がない場合は、特に、労働契約上の根拠がない限り、使用者が賃金を一方的に引き下げることはできず、労働者が合意しない賃金引き下げに法的な拘束力はありませんし、使用者から迫られても労働者に合意しなければならない義務はありません。また、合意したとしても、合意の内容が就業規則や労働協約に反している場合は無効であり、合意の手続き、内容に錯誤【民法第95条】、詐欺【民法第96条】、強迫【民法第96条】、公序良俗違反【民法第90条】があてはまるようであれば、労働者は、合意の無効や取消しを主張することができます。
 就業規則による賃金の引き下げについては、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより労働者の不利益に労働条件を変更することはできない【労働契約法第9条】」と、たとえ就業規則の変更という手法であっても、労働者と使用者とが合意した賃金を一方的に労働者の不利益に変更することはできないことが原則であるとした上で、①就業規則の変更が、“労働者の受ける不利益の程度”、“ 労働条件の変更の必要性”、“ 変更後の就業規則の内容の相当性”、“ 労働組合等との交渉の状況”などの事情に照らして合理的なものであること、②使用者が、変更後の就業規則を労働者に周知させること、の2点を充たす場合には、例外として、労働者の合意なく、使用者が賃金を不利益に変更することができるものとされています【労働契約法第10条】。
 一方、労働組合と使用者との労働協約を変更することによる賃金の引き下げについては、労働組合と使用者とが充分に労使協議または団体交渉を行い、労働条件の変更について合意したときは、労働協約を締結することにより、不利益変更も含め、原則として合意内容が組合員に対し適用されることとなります【労働組合法第16条】。判例においても、労働協約の締結により労働条件が引き下げられた場合、その協約が特定の組合員などを不利益に取り扱うことを意図して締結された等労働組合の目的を逸脱して締結されたなどの特別の事情がない限り、その協約に反対している組合員もこれに従わなければならないとされています【朝日火災海上保険事件 最一小判 平9.3.27】。
 業績悪化に伴い、整理解雇の回避策として賃金の引き下げが行われることがありますが、そのような場合でも、「従業員の賃金は、労働契約の内容として最も重要な労働条件であるため、労働者の同意を得ることなく一方的に不利益に変更することはできない。合理化の一環として整理解雇を回避するためのものであったとしても一方的な不利益変更はできない【チェースマンハッタン銀行事件 東京地判 平6.9.14】」ことが法的な考え方です。
 業績が悪化し、人件費コストを削減する必要性が生じた場合、使用者は、労働者や労働組合にその状況を具体に説明した上で、不利益が大きくならない程度の賃金引き下げについて、充分に理解を得る努力が大切であるといえます
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2 配置転換(配転)・出向・転籍について

 使用者からの配転命令は、命令に労働契約上の根拠があり、当該配転が配転命令権の範囲内であれば有効となります。多くの企業では、就業規則等において「業務上の必要がある場合、配置転換を命じることができる」などの包括的な規定を定め、これに基づいて労働者に配転が命じられますが、当該命令に「業務上の必要性が存しない場合、または業務上の必要性が存する場合であっても・・・他の不当な動機・目的をもってなされたもの、もしくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもの【東亜ペイント事件 最二小判 昭61.7.14】」として権利の濫用が認められるような場合には、配転命令そのものが違法となり、労働者はこれを拒否することができます。
 また、労働契約において、労働の種類・態様・場所等について特別な合意(勤務地や仕事内容について、採用などの際の通常の労働条件通知程度ではなく、明確な限定合意が必要であると考えられています)がなされている場合、その合意を変更するような配転命令は、労働者本人の同意がない限り効力がない(一方的に命令できない)とされています。
 出向(在籍出向)は、企業間の配置転換であり、その命令が有効とされるためには、就業規則で単に「出向を命じうる」などの概括的な規定だけでは足りず、採用時の説明、労働契約、就業規則、労働協約などによって、出向を命じることそのものが明確化されていること、出向先における労働条件が明示されていることなどが必要であるとされ、さらに、就業規則での出向条項に加え、労働協約において、出向期間、出向中の地位、賃金、退職金、手当などの処遇について、出向する労働者の利益に配慮した具体的な具体的な規定が設けられていることで当該出向命令の有効性が認められるとした判例があります【新日本製鉄事件 最二小判 平15.4.18】。
 また、労働契約法では、出向について、「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は無効とする【労働契約法第14条】」と定められています。
 転籍は、労務が提供されている転籍元企業(使用者)と労働者との労働契約を終了させ、新たな転籍先企業(使用者)と労働者との間に雇用関係を成立させる労働契約であり、転籍元企業との労働契約の終了、転籍先企業への雇用関係の成立のいずれについても労働者の個別の同意が必要です【民法第625条第1項】【日東タイヤ事件 最二小判 昭48.10.19】。使用者は、就業規則や労働協約の転籍条項を根拠に転籍を命令することはできないと考えられています。
 また、企業がその一部門を独立させて新会社を設立し、新会社に社員の一部を移すことについては、労働契約承継法により、移籍する部門に主たる業務として従事していたかどうかなどにより労働関係の承継が決定されることが定められています。
 業績悪化に伴う雇用調整の手法としての配置転換、出向、転籍はありえますが、それぞれに法的な要件の検討が必要であり、業績悪化がゆえにそれらが無制限に認められるものではありません。
 雇用調整の最終手段である整理解雇の回避策としての配置転換については、一般に、労働の種類・態様・場所等について特別な合意がない正社員に関しては、広く認められるべきであると考えられています。また、特別な合意がある正社員については、特別な合意が継続できないからと直ちに解雇にするということではなく、まずは配置転換を行うなどの解雇回避努力が行われることが適切であると思われます。
 整理解雇の回避策としての出向については、雇用調整の必要性が認められたとしても、それによって労働者に出向の義務が生じるというものではありません。出向命令が有効であるにもかかわらず拒否された場合には、業務命令違反として解雇事由になることが考えられますが、要件が整っていない出向命令の拒否を理由に解雇した場合は、整理解雇の要件に照らし、当該出向が解雇を回避する努力として認められるかどうかなどにより、解雇の有効性が判断されることになります【大阪造船所事件 大阪地決 平元.6.27】。また、転籍の打診が拒否された場合の解雇についても、その有効性は、他の解雇回避策の余地を含めた整理解雇の法理によって判断されることになります【千代田化工建設 東京高判 平5.3.31】。
 業績悪化に伴うリストラ策などで、勤務していた事業所が移転して通勤することが困難となったため労働者から退職した、労働契約上特定されていた勤務地から遠隔地への配転命令に応じられないため労働者から退職した、などの場合は、自分の意思による退職(自己都合退職)であっても正当事由があるとして、雇用保険における失業等給付の所定給付日数が手厚くなることがあります。
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3 退職勧奨、希望退職、解雇、雇止めについて

 業績悪化に伴う雇用調整の手法として使用者から退職勧奨や希望退職の募集が行われることがあります。
 使用者から労働者に対して、「辞めて欲しい」「退職してくれないか」などとする個別の退職勧奨は、あくまでも使用者が労働者に退職を勧めるものであり、労働者に応じなければならない義務はなく、応じるかどうかは労働者の自由な判断です。使用者から強く退職を勧められても、それが退職勧奨である限り、労働者に退職する意思がなければ応じる必要はありません。
 希望退職は、一般に、雇用調整の最終手段である整理解雇の前段の措置として実施されるもので、使用者が通常の退職条件よりも有利な条件を設定し、労働者の退職を促すものです。希望退職に係る優遇措置は、本来の退職金を割増しとするもの、一定額の加算金を加えるもの、両者をミックスしたものなどが一般的ですが、退職を申し出るかどうかは、退職勧奨と同様にあくまでも労働者の自由な意思に委ねられています。使用者側が特定の個人に退職を申し出るよう強制したり、申し出ることなく残留した場合には不利益に扱うというように脅したりすることは、退職そのものの効力が争われることにもなります。
 希望退職では、労働者からの応募に対し、使用者の承諾要件の明示がない場合とある場合とでは法的性質が異なります。使用者の承諾要件が明示されていない場合は、労働者の意思表示が使用者に到達すれば当然に合意解約が成立します。これに対し、使用者の承諾要件が明示されている場合には、希望退職の募集は「合意解約の申込みの誘引」とみなされ、労働者の意思表示に対する使用者の承諾によって合意解約が成立するとされています【大和銀行事件 大阪地判 平12.5.21】。
 解雇とは、使用者から労働者になされる労働契約の一方的な解約であり、業績悪化による業務の縮小、経営の合理化等により人員整理のために行われる解雇を整理解雇と言います。解雇については、労働契約法において「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利(解雇権)を濫用したものとして、無効となる」と定められています【労働契約法第16条】。
 整理解雇は、労働者に責任がなく、専ら使用者側の経営上の都合による解雇です。整理解雇も解雇権の濫用と認められる場合は無効となり、これまでの判例から、整理解雇が解雇権の濫用になるかどうかを判断する基準として、次の四つの要件が示されています[※]。
①整理解雇をしなければならないほどの経営上の必要性が客観的に認められること[経営上の必要性]。
②整理解雇を行うまでに、配置転換、出向、希望退職者の募集など、解雇を回避するための努力が充分に尽くされていること[解雇回避の努力]。
③解雇される労働者を選定する基準が合理的なものであり、かつその運用もまた合理的であること[人選の合理性]。
④整理解雇の必要性、時期、方法、規模、人選の基準についての充分な説明など、使用者が労働者から納得を得るための真剣な努力を行っていること[労使間の協議]。
[※] 近年、これらを「要件」ではなく「要素」であるとして包括的に判断する判例も見られますが、基本的には四つの指標が整理解雇にあたり検討されるべき項目であることに変わりはないとされています。
 整理解雇であっても、解雇である以上、少なくとも30日前に労働者に予告されなければならず、30日前に予告をしない場合は、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金が支払われなければなりません(予告の日数は、平均賃金を1日分支払った日数だけ短縮できます)【労働基準法第20条】。
 雇い止めは、期間に定めがある労働契約(有期労働契約)の契約期間が満了するにあたり、契約の更新を使用者が拒絶することです。一時的、季節的な業務をするため、あらかじめ労働契約の期間を決め、労使ともにそれを認識していればトラブルになることはないのですが、特に、有期労働契約のもとで恒常的な業務を行い、契約の更新が繰り返されている中での雇い止めについて、しばしばトラブルが起こっています。このような場合、その実態によっては解雇に関する法理が類推適用されることがあり、類推適用が認められる場合には、解雇と同じく解雇権濫用法理などに照らし、当該雇い止めの有効性が判断されることになります。【東芝柳町工場事件 最一小判 昭49.7.22】【労働契約法第16条】。
 人員整理を目的とする雇い止めについても、解雇に関する法理が類推適用されるような場合には、整理解雇の法理に即してその有効性が判断されますが、有期労働契約の雇い止めと期間の定めがない労働者を解雇する場合とでは、その有効性を判断する基準についておのずから合理的な差異があるとされています【日立メディコ事件 最一小判 昭61.12.4】。
 他方、正社員と同様に期間労働力化している有期契約労働者については、経営上の必要性を始めとする要件が厳しく吟味されるものと考えられており、また、3ヵ月の有期労働契約を14年~17年反復更新されてきた現場労働者の雇い止め(整理解雇)の効力について、期間に定めがない正社員とはおのずと判断基準に差異があるものの、その差異を考慮してもなお解雇権の濫用として無効となるとされた判例もあります【安川電機八幡工場事件 福岡地小倉支判 平16.5.11】。
 使用者は、3回以上有期労働契約が更新されている労働者、または、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している有期労働契約の労働者について、契約を更新する旨明示していた当該契約を更新しないこととする場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません【平成15年厚生労働省告示、平20.3.1一部改正】。
 あらかじめ契約の期間が労使で合意されている有期労働契約の労働者を契約期間の途中で解雇するには、期間の定めがない労働者を解雇するよりもさらに合理的な理由を必要とし、使用者は、やむを得ない事由がある場合を除き、労働者を解雇することができません【労働契約法第17条第1項】。
 また、契約期間途中の解雇におけるやむを得ない事由が使用者の過失による場合、使用者は労働者にその生じた損害を賠償する必要が生じます【民法第 628条】。この場合の賠償限度額は、労働契約で定めた期間満了までの賃金相当額であると考えられます。そのため、業績悪化を理由に有期労働契約の労働者が契約期間の途中で解雇された場合、使用者側に過失があれば、その理由がやむを得ないものであっても労働者は残りの契約期間の賃金相当額を損害賠償として求めることができるということになります。

 有期労働契約の期間途中での解雇についても、一部の例外を除き、労働基準法に定める解雇の手続が必要です。
* 本稿作成にあたっては、「労働法第八版/菅野和夫著/弘文堂」を参考にさせていただきました。
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 夜間相談の日程と場所(平成21年4月~6月)

※ 夜間相談日は、午前9時から午後8時までご相談を受け付けています。
※ 詳細な場所は、こちらをご覧ください。
 総合労働事務所
     大阪市中央区石町2-5-3 エル・おおさか南館3階
     相談専用TEL 06-6946-2600
 総合労働事務所北大阪センター
     豊中市新千里東町1-2-4 信用保証ビル6階
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     相談専用TEL 072-233-6821
4月2日(木)
4月9日(木)
4月16日(木)
4月23日(木)
4月30日(木)
5月7日(木)
5月14日(木)
5月21日(木)
5月28日(木)
総合労働事務所
北大阪センター
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南大阪センター
総合労働事務所
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北大阪センター
総合労働事務所
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6月4日(木) 総合労働事務所
6月11日(木) 北大阪センター
6月18日(木) 総合労働事務所
6月25日(木) 南大阪センター


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今月の労働相談 | 15:28:10 | Trackback(0) | Comments(0)
2月の労働相談【懲戒処分について】
今月の労働相談Q&A 懲戒処分の基礎知識と留意点

Q
 私は、社員数20名の会社に勤務しています。社員がミスをするたびに、社長は「懲戒処分で解雇にするぞ」と口癖のように言い、私達はいつも不安に駆られながら仕事をしています。些細なミスであっても、懲戒解雇になるのでしょうか。

A
 使用者は労働者の企業秩序や服務に違反する行為に対して懲戒処分を科すことができますが、その事由及び懲戒の種類・内容は、あらかじめ就業規則等に定めておくことが必要です。また、就業規則等に定めていればいかなる懲戒処分も自由になし得るかといえばそうではなく、一定の合理性を必要とします。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない処分は、権利の濫用として無効となります。
  まず、就業規則を確認しましょう。単発で簡易な事務的なミス程度では、懲戒処分にはなりません。
1 懲戒処分とは

 懲戒処分は、使用者が企業秩序を維持するために設けた服務規律や使用者の指示・命令に違反したなどの場合に労働者に対して制裁罰として科される処分であり、労働者にとっては、賃金が減額されたり、解雇されたりという大きな不利益を伴うため、実施においては法的根拠を踏まえた適正な対応が求められています。
 労働契約法では、懲戒(処分)について、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効となる【労働契約法第15条】」と定められています。
2 使用者が懲戒処分を行うことができる場合

 懲戒処分は、労働者と労働契約を結んでいる使用者が労働者に対して行う特別な制裁罰であるので、労働契約関係における特別な根拠等が必要です。
具体的には、使用者が懲戒処分を行うには、労働契約書や就業規則等に懲戒の事由や種類が明確に定められているとともに【労働基準法第15条第1項(使用者の労働条件明示義務)、労働基準法第89条9号(就業規則における記載事項)】、定めの内容が企業の円滑な運営上合理的なものでなければならず、その定めが労働者に周知されていることが必要です【労働契約法第7条】。
また当然に就業規則等に定められた懲戒事由に該当する事実がなければ懲戒処分を行うことはできません。
多くの企業で定められている典型的な懲戒事由には次のようなものがあります。
  (1) 経歴詐称

採用にあたって労働者が学歴、職歴、犯罪歴等を偽っていた場合。対象となるのは、最終学歴や職歴などの重要な経歴の詐称に限られ、「経歴は、企業秩序の維持にかかわる重要な事項であるため、懲戒事由となりうる【炭研精工事件 最一小判 平3.9.19】」とされています。
  (2) 業務命令違反

 使用者からの合理的な業務命令に労働者が従わなかった場合に業務命令違反として懲戒処分の対象になることがあります。
 ただし、違反行為が認められたとしても、それに対する懲戒処分が余りに過酷であるときには懲戒権の濫用とされ、当該処分が無効となることがあります【労働契約法第15条】。
  (3) 職場規律違反

 勤務時間中職務に専念しない、正当な理由なく会社の名誉を損なう行為をする・機密事項を漏らすなど、企業が定める規律に違反する行為は懲戒処分の対象となり得ます。
 ただし、職場規律に定められている禁止事項や許可事項が有効であるとしても、違反行為が実質的に企業秩序を乱すおそれがない、乱すことが極めて少ない場合、その行為に対して行われた懲戒処分は懲戒権の濫用になるものと考えられます【「目黒電報電話局事件 最三小判 昭52.12.13」ほか】」
  (4) 私生活上の非行

 労働者の私生活上の非行についても、企業の名誉や信用を損なうことがあるため、懲戒処分の対象となることがあります。しかし、これには労働者のプライバシー(私生活)尊重の要請との関係から、事由の該当性や処分の相当性はより厳格に判断されることになります。
 判例では、住居侵入罪で罰金刑を受けた社員の懲戒解雇をめぐり、「当該行為が私生活の範囲内で行われたものであり、刑罰も罰金2,500円程度に止まり、職務上の地位も一般工員であったなどの事情から懲戒解雇が無効とされた【横浜ゴム事件 最三小判 昭45.7.28】」ものがあります。
  (5) 兼業(二重就職)禁止

 会社の許可を受けずに他社に雇用されたり、自ら事業を営むことを兼業(二重就職)として禁止事項とし、これに違反した場合に懲戒処分とされることがあります。しかし、これについても、労働者の勤務時間外のプライバシー(私生活)尊重の要請との関係から、事由の該当性や処分の相当性はより厳格に判断されることになります。 
 判例では、一般に、「深夜に及ぶ長時間の兼業で労務の提供に支障が生じる場合【小川建設事件 東京地決 昭57.11.19】」、「競合する会社への就職、事業経営で会社への背信行為にあたる場合【ナショナルシューズ事件 東京地判 平2.3.23】」に限定して懲戒事由に該当するものと判断されています。
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3 懲戒処分の主な種類

 懲戒処分の種類としては、「戒告」「減給」「降格」「出勤停止」「停職」「諭旨解雇」「懲戒解雇」などがあり、企業によって様々ですが、最もよくみられるのは次の4種類です。 
  (1) 譴責(けんせき)・戒告

 通常、譴責とは、始末書の提出をもって将来を戒めるものであり、戒告は、将来を戒めるのみで始末書の提出は伴いません。また、譴責処分を言い渡された労働者が始末書の提出を拒んだ場合、使用者がそのことを理由に業務命令違反として懲戒処分ができるかどうかという問題については、労働契約は、労働者の人格まで支配するものではないため、始末書の提出は、あくまで労働者の任意な意思に任されるべき性質のものであり、懲戒処分によって強制することはできないものと考えられます【福知山信用金庫事件 大阪高裁 昭53.10.27】。
  (2) 減給

 制裁罰として賃金から一定の額を差し引くものです。労働基準法では、「就業規則で労働者に対して減給の制裁を定める場合は、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定められています【労働基準法第91条】。
 なお、遅刻、早退、欠勤に対する賃金の控除は、実際に働かなかった時間に相当するだけの控除であれば単に賃金計算の問題であるにすぎませんが、実際に働かなかった時間に相当する額以上に控除されている場合は、その超える額について減給の制裁になるとされています【昭63.3.14 基発150号】。
  (3) 出勤停止

 労働契約は継続しながら、一定期間労働者の就労を禁止するものです。通常、その間の賃金を支給されず、勤続年数にも算入されません。出勤停止の期間について特に法の定めはありませんが、賃金不支給を伴う期間が異常に長い出勤停止処分は、公序良俗に反し無効となる場合があります。
  (4) 懲戒解雇

 懲戒処分の中で最も重い処分であり、それよりも軽い処分を適用する余地のないものに限られます。
 懲戒解雇では、労働基準法に定める解雇の手続(解雇予告、解雇予告手当支払)をすることなく即時に行われ、退職金の全部または一部が支払われないとの取り扱いが多く見られますが、解雇の手続を省略するには、事前に労働基準監督署長の認定(「除外認定」)を受けなければなりません【労働基準法第19条第2項、同第20条第3項】。また、退職金不支給の取扱いを行うには、そのことを就業規則(退職金規程など)に明記した上で周知されていることが必要です。
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4 懲戒処分を受けた場合の対応~懲戒処分のルール(有効要件)

 もしも使用者から懲戒処分を言い渡されたら、まず次のようなルールが守られているか確認することが重要です。ルールが守られていない場合は、懲戒権の濫用にあたるとして、処分の撤回などを求めることができる場合があります。
  (1) 罪刑法定主義の原則

就業規則等に懲戒処分の根拠規定が定められていること。 
  (2) 相当性の原則

懲戒の事由と懲戒処分の内容が合理的で社会通念に照らして常識的であること。
  (3) 平等待遇の原則

 人や地位が異なっても、類似の事例と処分の程度が変わらず、平等にされていること。
  (4) 適正手続の原則

 処分に至る手続が適正かつ公正に行われていること。特に、本人に弁明の機会を与えることは最小限必要とされています。
  (5) 一事不再理の原則

同一の事案に対して2回懲戒処分を行うことは許されません。
  (6) 不遡及の原則

新たに懲戒規定等が定められた場合、それ以前の行為にその規定を適用して処分することはできません。
  (7) 個人責任の原則

対象者個人と関係のある一定範囲の者に対してまで連帯責任を負わせることは許されません。
5 おわりに

懲戒処分は労働者に大きな不利益を及ぼす影響が大きいものです。処分の相当性を必要とし、適正な手続きや平等な取扱を行わなければなりません。懲戒処分についてご相談があれば、お気軽に総合労働事務所までご連絡ください。
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 夜間相談の日程と場所(平成21年2月~4月)

※ 夜間相談日は、午前9時から午後8時までご相談を受け付けています。
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     相談専用TEL 06-6946-2600
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 総合労働事務所南大阪センター
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     相談専用TEL 072-233-6821
2月5日(木) 総合労働事務所
2月12日(木) 北大阪センター
2月19日(木) 総合労働事務所
2月26日(木) 南大阪センター
3月5日(木) 総合労働事務所
3月12日(木) 北大阪センター
3月19日(木) 総合労働事務所
3月26日(木) 南大阪センター
4月2日(木) 総合労働事務所
4月9日(木) 北大阪センター
4月16日(木) 総合労働事務所
4月23日(木) 南大阪センター
4月30日(木) 総合労働事務所


今月の労働相談 | 13:10:35 | Trackback(0) | Comments(0)
今月の労働相談【休職知識】
 今月の労働相談Q&A 休職の基礎知識



私は、内臓の病気のため3ヵ月休職しています。会社は、休職期間が過ぎたのでこのままだと退職になると言っています。働き続けることはできないのでしょうか。


A

 
 会社の規定では、休職についてどのようになっていますか、まず確かめましょう。その上で、働くことに支障はないか主治医と相談の上、会社に働き続けたい旨を申し出て話し合ってみてはいかがでしょうか。
 休職については、労働基準法などに特に定められておらず、一般的には、会社の就業規則に定められています。休職には、お尋ねのような病気休職が典型的と見られるところですが、休職の種類としては、ほかにも就業規則で懲戒処分としての休職なども見られます。
 病気による休職(いわゆる「私傷病による休職」)は、労働者が業務上以外の理由による傷病のため、相当の期間、就労することができない場合に、一定の期間就労をさせない状態にすることで、就業規則に規定されていることが必要です。
 病気による休職は、休業期間の間に治癒すれば復職となりますが、病気が長引けば、労働者は労働契約中の労務の提供ができなくなり、解雇という事態になります。就業規則の中に解雇事由として掲げられていれば、原則的には、それが適用されることになります。
 なお、「治癒」したかどうかについて、原則として、「病気前の職務を通常の程度行える健康状態に復したとき」との考え方が多数であり、その内容について会社の就業規則によるものとされています。ただし、その契約上、職種が限定されていないような場合であれば、原職復帰が困難であっても、現実に配置可能な職場があればその業務につかせるべきとする判例も見られます(参考:「労働法(第7版第2補正)」菅野和夫:弘文堂401頁)。
  工事の現場監督をしていた労働者が病気のため、事務作業ならできると申し出たが使用者が自宅療養を命じ賃金を支払わなかった事案では、その労働者の申し出も、その能力や経験、地位、企業の規模や労働者の配置等を考慮し、その労働者が他の業務に配置される現実的可能性がある場合には「債務の本旨に従った履行の提供である」として、裁判所は賃金の支払いを命じています【片山組事件 最一小判 平成10年4月9日】。
 病気による休職の場合の賃金については、労働者の事情により労務を提供できないのですから、賃金が支払われない場合でも、それだけで違法ということはできません。しかし、就業規則により一定の保障をしている場合もありますので、就業規則を調べ会社に問い合わせることも薦めます。
 なお、病気のため働けない場合で賃金がもらえないとき、健康保険法による傷病手当金が支給されます。これは、労働者が療養のため労務に服することができないとき、労務に服することができなくなった日が継続して4日以降、1年6ヵ月の間、支給されるもので、支給額は標準報酬日額の3分の2です(標準報酬月額の算出方法の概算は、過去3ヵ月間に得た額を3で除した額であり、標準報酬日額は、標準報酬月額を30で割った額ですが、さまざまな規定があります)。労働者自身が傷病手当金請求書に医師の診断書と事業主の就労していない等の証明書を添付して社会保険事務所に提出します。
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 最近は、こころの病に基づく休職が増えてきました。厚生労働省では、主として職場のメンタルヘルス対策として、労働安全衛生法に基づく「労働者の心の健康の保持増進のための指針【平成18年3月31日告示3号】を策定し、メンタルヘルスの具体的な進め方などを示しています。
 この中で、精神面に支障をきたして休職した労働者が円滑に職場復帰し、働き続けることができるようにするため、事業者向けに、労使の間で設置される衛生委員会で職場復帰のための支援プログラムを策定するよう薦めています。次のようなプログラムとなっています。
 第1ステップ/病気休業開始及び休業中のケア
イ)労働者からの診断書
ロ)管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等によるケア


 第2ステップ/主治医による職場復帰可能性の判断
労働者からの職場復帰の意思表示・職場復帰可能の診断書の提出


 第3ステップ/職場復帰の可否の判断・職場復帰支援プランの作成
イ)情報の収集と評価
  (労働者の職場復帰の意思・主治医の意見・労働者の状態・職場環境等)
ロ)職場復帰の可否についての判断
ハ)職場復帰支援プランの作成(職場復帰日・管理監督者による業務上の配慮・
  人事労務管理上の対応・産業医等の意見・フォローアップ 等)


 第4ステップ/最終的な職場復帰の決定
イ)労働者の状態の最終確認
ロ)就業上の措置等に関する意見書の作成
ハ)事業者による最終的な職場復帰の決定

<職場復帰>

 第5ステップ/職場復帰後のフォローアップ
イ)症状の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認
ロ)勤務状況及び業務遂行能力の評価
ハ)職場復帰支援プランの実施状況の確認
ニ)治療状況の確認
ホ)職場復帰支援プランの評価と見直し
* 詳しくは、厚生労働省HP「職場におけるメンタルヘルス対策」の中にある「マニュアル」を参照
* なお、事業者の規模の小さい、いわゆる小規模事業場では、事業場限りでは限界があるため、地域産業保健センターなどの支援を受けながら進めることも効果的です。
  大阪府内の地域産業保健センターの所在地は、こちらを参照してください。
  
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 夜間相談の日程と場所(平成21年1月~3月)

※ 夜間相談日は、午前9時から午後8時までご相談を受け付けています。
※ 詳細な場所は、こちらをご覧ください。
 総合労働事務所
     大阪市中央区石町2-5-3 エル・おおさか南館3階
     相談専用TEL 06-6946-2600
 総合労働事務所北大阪センター
     豊中市新千里東町1-2-4 信用保証ビル6階
     相談専用TEL 06-6872-3030
 総合労働事務所南大阪センター
     堺市堺区北瓦町1-3-17 NBF堺東ビル5階
     相談専用TEL 072-233-6821
1月8日(木) 北大阪センター
1月15日(木) 総合労働事務所
1月22日(木) 南大阪センター
1月29日(木) 総合労働事務所
2月5日(木) 総合労働事務所
2月12日(木) 北大阪センター
2月19日(木) 総合労働事務所
2月26日(木) 南大阪センター
3月5日(木) 総合労働事務所
3月12日(木) 北大阪センター
3月19日(木) 総合労働事務所
3月26日(木) 南大阪センター
 1月24日(土)・25日(日)、「緊急労働相談会」として、総合労働事務所、北大阪センター、南大阪センターでは「土曜日・日曜日」に労働相談を行います。電話、面談どちらでもOKです。どうぞお気軽にご相談ください。


今月の労働相談 | 17:24:46 | Trackback(0) | Comments(0)
10月の労働相談【業務上のミスと損害賠償について】
【このコーナーは大阪総合労働事務所に連載されている
「今月の労働相談」コーナーの周知を目的として全文転載を行なっています。】

Q  
製造業に携わっています。先月、私の不注意から作業手順を誤り、多くの不良品を出してしまいました。その後、社長から「多額の損害が出た。全額弁償してもらう。」と迫られています。確かに私にも落ち度はあったと思いますが、全額弁償しないといけないのでしょうか。

A
 労働者が仕事上でミスをして会社に損害が発生したとしても、その損害が使用者の業務の一環として発生したことを考えると、当該損害が労働者の故意や(業務を遂行する上での注意義務違反はあるものの)重大な過失によるものでなければ、使用者からの労働者に対する賠償請求や求償請求が認められない場合が多いようです。
 どのような場合に賠償する必要が生じるのか、賠償する必要が生じるとしても全額賠償しなければならないのか。考え方をみていきましょう。

1 労働者の損害賠償の考え方
 法的には、労働者が労働契約上の労働義務や秘密保持等の付随的義務に反し、使用者に損害を与えた場合には、当該労働者には、債務不履行に基づく使用者に対する損害賠償責任は免れないとされており【民法第415条及び同416条】、当該労働者の行為が不法行為であれば、不法行為による損害賠償【民法第709条】の責任が生じます。また、労働者の不法行為により取引先等の第3者に損害が及んだ場合は、当該労働者を雇用している使用者の当該損害に係る賠償責任【使用者責任(民法第715条第1項)】を前提として、使用者から当該労働者に対する求償権の行使についても認められています【民法第715条第3項】。
※ 労働基準法では使用者の労働者に対する賠償予定の禁止が定められています【労働基準法第16条】が、これは損害賠償に係る金額を予定することを禁止するものであり、現実に生じた損害について賠償請求することを禁止するものではありません【S22.9.13 発基17号】。
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2 労働者が負担する損害賠償の程度
 しかし、いかに労働者に損害賠償責任や使用者に求償権があるとはいえ、(1)使用者が労働者の労働によって利益を得ているにもかかわらず、業務を遂行する中で発生した損害を労働者に負担させるというのは公平を欠いていること、 (2)使用者と労働者には著しい経済力の差があること、(3)使用者は、経営から生じる定形的危険について、保険制度を利用するなどして損失の分散を図ることができることなどから、発生した損害については、労使双方に公平な分担を求める、つまり、労働者の責任が制限されるべきものと考えられています。
 判例では、労働者の加害行為により使用者に損害が発生した場合、使用者は労働者に対して賠償請求できるとしていますが、同時に、「諸般の事情」を考慮し「信義則」という一般原則によって使用者の賠償及び求償を制限する【※】とされています。
【※】使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度といった「諸般の事情」に照らし、損害の公平な分担という見地から「信義則上」相当と認められる程度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができるものと解すべきであるとされています【最高裁 S51.7.8 茨城石炭商事事件】。
 また、これまでの判例では、労働者の賠償の程度について、次のような判断がなされています。
 タンクローリーの運転中に交通事故を起こした事案で、(1)使用者が保険に加入していなかったこと、(2)労働者の勤務成績が普通以上であったことなどから、労働者の負担は全損害の4分の1を限度とすべきとした【最高裁 S51.7.8 茨城石炭商事事件】。
 深夜の勤務中に居眠りをして会社の工作機械に損傷を与えた事案で、勤務中に居眠りをしたことは十分に労務を提供していたとはいえず、その過失は重大であり、債務不履行による責任は免れないとしつつも、(1)使用者と従業員の経済力、賠償の負担能力の格差が大きいこと、(2)使用者が機械保険に加入するなどの損害軽減措置を講じていなかったことなどに鑑み、労働者の負担を損害額の4分の1とした【名古屋地判 S62.7.27 大隈鉄工所事件】。
 業務中に交通事故を起こした事案で、(1)使用者が車両保険等に加入していなかったこと、(2)同社で頻繁に交通事故があるということは、労働者自身の不注意だけではなく、労働条件や従業員に対する安全指導、車両整備等に原因があったものと推察されること(事実として、就業規則や36協定の不作成、休みが月1日程度しかないなどの状況があった)、(3)当該労働者に重大な過失があったとは認められないことなどから、労働者の負担は5%程度にとどまるとした【大阪高判 H13.4.11 K興業事件】。

3 基本的な対応方法
 使用者から損害賠償を求められた場合は、まず、本当に支払う必要があるものなのか、支払うとしてもどの程度支払う責任があるのかなどを精査する必要があります。
 具体には、使用者が受けたとする損害を詳細に示してもらい、その上で、従事する業務の内容、業務遂行をめぐる環境、労働者側の故意や過失の程度、賃金額等から、負担の程度を決定することが妥当かと思われます。
 このようなことがあれば、お気軽に総合労働事務所にご相談ください。

以上http://www.pref.osaka.jp/sogorodo/soudan/kongetsu/2010.htmlより転載

今月の労働相談 | 14:56:51 | Trackback(0) | Comments(0)
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